幼児期の移行支援について
発達障害の幼児期の支援施設として児童発達支援センターがあります。その支援方針は何でしょうか?
発達を伸ばす?自立を促す?発達障害を治す?保護者に寄りそう?保護者のニーズをくみ取る?幼稚園や保育園に移行できるようにする?
そのような方針もはっきりしない事業所もあるでしょうし、知らないまま働いている職員の方もたくさんいらっしゃると思います。目標は1つではないでしょうし複数あると思います。まずそれをはっきりさせましょう。
さて目標がはっきりしない中で、幼稚園や保育園に移行できるようにしようと頑張る場合を考えます。児童発達支援にある一定期間の間在籍し、移行予定の幼稚園も「受け入れますよ、大丈夫ですよ」と言っている。保護者もそれを強く望んでいる。担任や管理者も「まあ事業所内では良い子だから大丈夫だろう」と思って一部の職員の反対を押し切って幼稚園に送り出す。
さて、その後、その子はどうなったか?幼稚園から「もう見れません」と言われ、保護者も失意と落胆の中、幼稚園を辞めさせられて、元の事業所に戻ってくる。その時になって、担任と管理者は、見込み通りにいかなかったことを思い知ることになります。子どもと保護者に与えたダメージは計り知れません。
なぜ、このようなことが起きるのか?事業所の方針が定まっていないこと、職員全員がそれを理解していないこと、そして何も根拠もない思い込みで物事を進めることが問題でしょう。
このような間違いを避けるためには、根拠のある実践が必要だと思います。幼稚園や保育園への移行を進めることを例に考えます。
担任も事業所内での適応が良いからという根拠があったわけですが、それでは弱すぎます。一番簡単なのは、お試し保育などで一日過ごしてもらいます。もちろん、職員はそれを観察してどのように振る舞うか子どもの行動観察を行い、何がよくて、何が足りないかというデータを集めます。園側の率直な意見も聞きますし、保護者の意見も聞きます。バイアスがかかるので園と保護者は別々の場で意見を聞きます。
まだ移行は難しいという結論に至ったら保護者と話し合いを持ち、事業所に戻って足りないところをどのように支援するかについて具体的な方策を取ります。保護者も具体的なデータや園での実態を見れば納得しやすいのではないでしょうか。言葉で説得するということを試みがちですが、現実を見るということの方が説得力がある場合があります。
私がお勧めするのは、3点あって1つは幼稚園や保育園に移行できるかどうかのチェックリストを作ること、2つ目は足りない所を指導するためのプログラム、3点目は移行のためのプログラムを用意することです。チェックリストは、保育園や幼稚園で働いた経験のある人や移行に失敗経験のある人が一緒になってブレインストーミングをしてリストアップすればできると思います。2つ目は、応用行動分析の方法論が役立つでしょう。
3点目は、今の教室から幼稚園・保育園の教室設定に近い環境を用意して段階的に移行していくことです。私が危惧するのは、どの教室も高度に構造化された設定ばかりだと、通常の教室設定が試せないので、複数の教室がある場合は1つは通常に近い設定にすることです。そのような段階的な教室設定が難しい場合は、お試し保育で外部の幼稚園や保育園と連携を取ることでしょう。
米国の発達障害の支援は進んでいると言われていますし実際そうです。たくさんの人が先進的な技術を求めて米国から学んでいます。私もその一人で、昔、米国に住んで勉強していました。今でもどんどん進化しているので、海外の文献や書籍にも目を通しています。最近読んでいるのはこれです。
私が米国で学んだのは、単なる形だけの支援技術だけでなくて、実用主義的な哲学や考え方(pragmatism)です。これはアメリカ人は、この言葉を知らない人もいますが、身体に染みついていると思います。日本人が自然に親しみ情緒性を感じるのと同じように自然に溶け込んでいるという感じでしょうか。
全て海外のものが良いとは思いません。良いものは取り入れ、そうでないものは排除する。それぞれの文化の特徴も、それぞれ長所と短所があります。日本の情緒的な精神文化は、心の豊かさをもたらしてくれますが、精神論に偏り過ぎると根拠のない根性論に陥ってしまいます。先の戦争や現代のスポーツのしごき問題にその教訓を生かさないといけません。西洋の合理性も、ある種の発展はもたらしてくれますが、精神的な空虚感や荒廃をもたらすというように。
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