暴力で問題解決を図るモデル?
幼稚園、保育園、通園施設に行ってよく相談される事例の1つは、何の理由もなく突然、他児を叩く蹴るといった暴力的行動をなんとかしてほしいというものです。そのようなお子さんを観察してみるとヒーローものを演じながら行動していることがあります。
70年代にアメリカの心理学者のバンデューラは、暴力的行動を観た子どもは、その後に暴力的行為を真似ることを実証しました。 ちなみに梅永雄二氏によると彼は、TEACCHの2代目ディレクターのゲーリー・メジボブ氏のスタンフォード大学の院生の時の師匠だそうです。バンデューラは、直接強化されないのに行動変容が生じるということで、行動理論を否定し社会学習理論を打ち立てました。その後、行動分析学からはベアーらが「般化模倣」と呼んでこの現象を行動論的に解説を試みています。
どの言説を取るにせよ、このような現象は、一般に子どもの間で見られるものだと思います。私も子どものころに戦いごっこやプロレスごっこをして遊んでいました。しかし、相手が痛がったり、嫌がったりしたらやめたり、謝ったり、手加減をするなど行動の調整をしながらバランスを取っていました。たまに兄弟間では本気の喧嘩に発展して親から弱化されることもありましたが。とにかく子ども心にフィクションと現実を区別して行動できていたわけです。まさにプロレスみたいな世界ですね。
発達障害のお子さんの中には、相手の様子を敏感に感じ取って自分の行動を変えるとか、手加減をすることが難しい子もいます。ですから、そのような行動レパートリーが身に付いていない幼いお子さんには、戦闘シーンのある子ども番組は見ないようにした方がよいと思います。