仮想通貨とトークンエコノミー
- 今本繁
- 2018年9月18日
- 読了時間: 2分
発達障がい児者の支援の分野で私たちになじみのあるトークンエコノミーですが、日常生活の身近な例として店舗で出しているポイントカードなどがあります。さらに近年は、仮想通貨なるものもどうやらトークンエコノミーのようだと言われていて、私たちの生活で使われている貨幣経済もトークンと言えばトークンです。支援の分野では、対象者の行動を強化する手段の1つとして用いられることが多いのですが、私は貨幣のように実生活で普通に存在し回っていくものと捉えています。あるご家庭でこんな例を聞きました。
その家族の自閉症のお子さんは、外出の際の買い物が好きで、文房具や食べ物などを親に買ってもらっています。その子は、ある程度、字の読み書きや簡単な計算もできるので、親は子どもにおこずかい帳をつけてもらって、金銭管理をしてもらおうと思いました。まず買い物に使うお金を稼いでもらうために、家でできる簡単なお手伝いAを課し、その賃金を500円と設定しました。お手伝いBにも500円を設定し、AとBの2つのお手伝いを行って、1日に千円程度稼げるようにしました。買い物に出かける前に、おこずかい帳の収入の欄に千円を記入してもらい、外出に出かけます。
外出先での買い物は、パターンになっていて決まったものを買います。支払いをする時は、親が電子マネーで行い、帰ってから子どもがおこずかいに支出を記入します。しかし、実際に買ったものの金額は千円の数倍です。親は、合計がだいたい千円に収まるように品物の金額を口頭で伝え、記入させました。親は、疑問に感じながらそのやり取りを数年続けられてきたそうです。
私は、この取り組みが効果的か、倫理的にどうなのかということとは別に、現実のある地域や国の枠組みの中で経済をコントロールできる立場の人や集団は、これと同じようなことをやっているのではないか?というふうに思いました。

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