ほめると子どもはダメになる
なんてことを言う著者だろう....と思い、ふと手に取って読んでみました。前に紹介した本もそうですが、まんまと出版社の術中にはまってしまったわけです。
よく読んでみるとなるほどと思うところもあります。要は子どもも甘やかせ過ぎると良くないよ、という主張だと思いますので、それはそうだと思います。
統計資料や大学で教えた個人的なエピソードなども引用して、褒める子育てが子どもをダメにしていることを説得しています。最近は傷つきやすく、注意やアドバイスをすると自分を否定されたと感じる学生が多く、それはほめて育てる子育てが蔓延しているせいだと述べています。先進各国の子育てに関する統計資料では、軒並み日本の親は子どもに甘く、厳しさが足りないという結果でした。
欧米では個人の自由が重んじられるので子どもも伸び伸び育てられているイメージがあるかもしれませんが、著者はその逆で欧米では、子どもに厳しい躾をするそうです。米国では体罰を肯定する親の割合も多いそうです。米国では子どもに厳しい躾を科したつけで70年代に、それを見直してほめて育てるという考えが広がっていったと言います。それが時期的に遅れて日本に入ってきたことで弊害が生じていると著者は考えています。私はそれよりも前の50年代にスポック博士の育児書という、厳しい躾は良くなくて自由に子育てするという考えが米国で流行って、その影響で70年代に若者のヒッピー文化が生じたと聞いています。
私も少なからず米国で留学した経験がありますので、子どもには意外と厳しいなあというのが印象としてあります。特に公共の場でのマナーは厳しく他人でも遠慮なく注意する雰囲気があります。また米国の郊外ではクリスチャンのコミュニティが発達しているので地域のつながりが強いですね。
これも意外でしたがフランスでは、子どもを幸せにするにはフラストレーションを与えることだと考えられているそうです。行動分析的アプローチに慣れている私には「子どもが癇癪を起しても(強化しないように)要求を通してはいけない」という原則が頭に浮かびました。私は発達障がいの子どもへの親や保育者の対応や考え方に接してて、日本では癇癪を起すと子どもの情緒発達に悪影響を与えると考えて癇癪を起させないように対応することが多いと感じています。
そのような情緒的なことを重んじるのは日本の伝統だと著者は述べています。それは江戸時代の記述にも見られていて、その時代の教育者はあまり子どもを甘やかしてはいけないと警告しています。明治期に日本を訪れた欧米人も日本のそのような風習をこれほど子どもの人格を尊重する国は他にないと述べているそうです。
著者は、情緒的な子育てが文化となっている日本で、欧米のほめる子育て(厳しすぎることへの反動としての)がそのまま入ってきたことが、弊害になっていると考えています。日本流の子育てでヒントになるのが、小説家で故人である遠藤周作氏の著書に描かれる「母の悲しげな眼」だと思いました。遠藤氏は子どもの頃に親に反発して悪友と付き合い、親の財布からお金をくすねて学校に行かず映画館で過ごして帰り嘘をついたのですが、学校から連絡が入っていて嘘がばれたそうです。お母さんは、玄関先で見つめ涙を流し、その後も隣室で人知れずすすり泣いていたそうです。遠藤氏はその様子を見て心を痛め改心したそうです。そのように情緒に訴えるやり方が日本にはあっているのかもしれません。
最後にほめることについての効用と弊害ですが、著者の意見と絡めて私の見解もまとめたいと思います。
・子どもが良いことをした時にほめることは良いがやたらとほめるのではない
・結果(テストの点数が良いなど)や状態(ピアノが上手いなど)ではなく、行動や姿勢や努力していることをほめる
・子どもが自分でできるようになって達成感を感じているなら、あえてご褒美を与えたりほめることは控えていく
・間違ったことに対して叱る時は、間違った行為を叱り、本人の人格を否定したり屈辱を与えるようなことは言わない
・強い体罰を与えなくても、妥協せず一貫性を持って接することで厳しく育てることはできる
・以上のようなことを子どもの個性に合わせてアレンジして行う
