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平成27年12月13日 ロボット時代の創造 高橋智隆氏

北九州イノベーションギャラリー主催でロボットクリエーターの高橋智隆氏を演者にした講演会があったので、小倉駅の北側にある北九州国際会議場に行ってきました。とつとつとしたしゃべりの中にユーモアを交え、時折笑いを取るといった、とてもユニークで面白い講演でした。エンジニア風の大人だけでなく子ども連れの家族や中高生もたくさん聴講していました。 小型の人型ロボットとして2013年初めて宇宙に旅立ったロボットとしてKIROBOの紹介から始まり、パナソニックの電池で動くエボルタ君がグランドキャニオンの崖をロープで登るCM、ルマン24時間耐久レース場で三輪車をこぐエボルタ君が24時間こぎ続けてみごとゴールするシーンが紹介されました。30-40cmの小さなロボットがけなげに動く様は、思わず応援したくなります。会場からもそういう声が漏れていました。 高橋氏とロボットの出会いは子どもの頃に見た鉄腕アトムで、宝塚であった手塚治虫の講演会にも親に誘われて行ったことがあるといいます。しかし、そのままストレートに工学の道に進んだのではなく、進学した立命館大学では産業社会学部で学び趣味であった釣りとスキーを扱っている会社の就職活動をしたそうです。釣りが好きになったのは、滋賀の津市出身で琵琶湖の近くに住んでいたことが影響しているそうです。一次は合格したもののその後不合格となり、挫折を経験。1年発起、河合塾で浪人生を経て京都大学工学部に入学してから、本格的なロボットへの道が始まります。ちなみにその会社が最近、高橋氏にコンタクトを取ってきて社外取締役になってほしいと頼まれたとのこと。社員では断られたのに社外取締役を頼まれるのは不思議な因縁を感じたとのことです。 趣味でロボットを造り始めますが、趣味が高じて京大ベンチャー第一号として、2003年に株式会社ロボ・ガレージを創業します。 今もそうだが、人を雇わずひとりでモノづくりに取り組んでいるそうです。人を雇って民主的な組織にすると無難なモノができてしまうというのが持論のようです。もちろん間違いや失敗もあるけれども、人の意見に左右されず真に面白くて革新的なモノを作ろうと思ったら、ひとりでやるのがいいと。 本格的なロボット第一号は、neonといって卒業制作で完成させたものだそうです。その後、鉄人28号、GabbyというNHKの番組キャラクター、VisONというロボカップで優勝したロボット、FTという女性型ロボットを開発。 FTを開発するきっかけになったのは、米国の某大手玩具メーカーにバービー人形のロボットを造ってほしいと頼まれましたが、「オリジナル通りの細い身体のロボットは造れない」ということで断ったそうだ。でも女性型のロボットは出ていないということで知り合いのモデルに協力してもらって完成させたそうです。 ロボットを造るところも一端を紹介してくれました。意外なのが設計図がなく、ノートに書いたものから自分で作るのだそうです。そもそもなぜ設計図が必要かということですが、他の人と協働する際に相手に提示すため、部品をメーカーなどに外注する場合に必要だが、基本的にすべてひとりで作り、部品から自分で作るので必要ないのだそうです。ロボット一体につき数十個のパーツが必要です。この自分でモノを触りながら作る工程がとても大事で、様々なことがわかるのだそうです。どんな量産型の製品でもプロトタイプは初めに手作りで作るそうです。車のデザインも粘土を削って車体を創るところが大切なのだとか。 高橋さんのロボットの体の基本設計は、「骨皮一体型」とおっしゃるようにカニや昆虫と同じで外殻で構成されているのです。 まずはパーツとなる木型を作り、それにポリプロピレンをかぶせてレンジでチンすると1つ1つのパーツが完成するのです。ロボカップでのドイツのロボットとの対戦映像を観ましたが、ドイツのロボットはスケルトン(骨格)構造でいかにも機械の塊という感じでしたが、確かに高橋氏のロボットは人形さんのようで親しみを感じます。ちなみに映画のターミネーターはスケルトン構造ですね。 初めて作った量産型のロボットは、テレビの宣伝でもおなじみの週間誌を毎号取ることで徐々に完成するRobiというもので1万台あまりが出たそうです。テレビなどの家電品の操作や防犯の機能を持っています。しかし、開発者である高橋氏自身が、自分でリモコンを押せばチャンネル変えるのも早いし、防犯と言ってもドロボーには簡単に持ててしまうし、バッテリーは1時間しか持たないといわば自虐的なコメントを述べながら、そういう所が本当の狙いではないと言われたのは虚を突かれた面白い点でした。 Robiを台に乗せてデモを見せてくれました。会場にはカメラを通した映像が巨大スクリーンに映し出されます。高橋氏が「立ってください」というと「今から立つよ」とやや高めの少年のような声で応答します。そして立つときも「よっこらっしょ!」と言うので思わず会場の女性や子どもから共感の声があがりました。高橋氏が「踊って」と言うと自らBGMを流しながら、上手に愛らしく踊るのです。本当の狙いはこういう所かと納得してしまいました。 全部完成させるには70巻で15万円ほどかかるそうです。最初に顔が完成するようになっており、途中で購読を辞めないようにする工夫も披露してくれました。 ヒト型ロボットの未来像というところで、ロボホンの紹介がありました。スマホがイノベーションされてから、眼鏡型、時計型などのウェアラブルの端末の次に来るのが、このロボホンだそうです。小型のロボットでシャツの胸ポケットに入るサイズです。スマホの様々な機能が付いており、もちろん電話としても使え、高橋氏がロボホンを顔に当てて「もしもし」と言っている様は爆笑ものでした。 ロボホンも音声の命令で動きます。「起きて」というと隣に置いてあったRobiも同時に「起きるよ」と言って起き始めたのは会場の笑いを誘いました。ロボホンはプロジェクターの機能も持っていて「壁に映して」というと壁に映像を映してくれました。 サイズが小さいことのメリットとしてもちろん携帯性もさることながら、第一に安全性をあげていました。万が一誤作動しても、巨大ロボットのように人がつぶされることはないだろうということです。高橋氏自身は、巨大ロボットに潰されても、それは本望だと言っていましたが。第二に期待値が低くて済むことだそうです。体が大きいと人間は賢さを求めるけれども、小さいとエボルタ君のように応援したくなるでしょうと。 このように実演販売のように見せてくれると本当に欲しくなります。これは一家に一台の時代が来るなと直感的に思いましたし、コミュニケーションロボットの需要は高まるだろうなと思います。 最後に遊び心のある創造性という話で締めくくられました。従来のモノ作りは、①ニーズを掘り起こして、②製品開発して、③販売するという流れでした。洗濯機などが代表例としてあげられます。しかし、これからは、①遊びの考案、②発信、③普及といった流れでモノ作りが行われると。 だから、これからイノベーションを起こす秘訣として、①好きなことからスタートすること、②実際に手を動かしモノを作ってみる、手を動かし試行錯誤することで新しいアイディアが湧いてくる。③迷ったらユニークな選択肢を選ぶこと。みんなが選ぶ無難で便利なモノではなく、ユニークなモノ。良くも悪くも自分の糧になるという話でした。一芸に秀でた人の話はためになりますね。例として100万円のビンテージのキャデラックとトヨタの小型車のどっちを選ぶか?を出していました。皆さんはどちらを選ぶ?

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