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認知行動療法セミナー平成27年8月16日大分大学医学部2

CBTでは、クライエントの発言内容から、認知・感情・行動を分けていくことが大切と言っています。英語文化では、この認知と感情は明確に分けられるのですが、日本語文化では必ずしも明確に分けられず曖昧だそうです。たとえば英語で、"I think...."と言えば思考だし、 "I feel...."と言えば感情、"I did...."と言えば行動というように動詞で明確に分けられるけれど、日本語では思考と感情がごちゃごちゃに語られるので判り辛いのだそうです。 あとCBTは治療の段階がマニュアル化されていることも特徴の1つです。あるCBTのセラピストは、そのマニュアルを丸暗記しないと免許皆伝はしないと言い切っています。マクドナルドに始まって欧米はマニュアル化が得意だなと思いました。でもそれも一理あって、いったん型を覚えたら、あとは様々な事例に応じて臨機応変に変えられるという意味のことを運転免許をたとえに説明されていました。 臨床的には、感情を特定化できることが非常に重要です。大まかにポジティブとネガティブ分かれます。 a)ポジティブな感情:嬉しいとか楽しいなど。あまり残らない。誰かと分かち合うことで対人関係の中で生じる。 b)ネガティブな感情: 怒りや悲しみ、不安など。いつまでも残りやすい。対人関係で孤立すると生じやすい。 なぜネガティブな感情の方が種類が多く、残りやすいのかというと、感情はアラームにの機能を持っているからというものです。 ・怒りー自分の思い通りにならない時に生じ、相手にそれを押し返す反応。 ・悲しみー何かを失う、喪失した時に生じる。 ・不安ー未知の出来事に遭遇する(特に女性で多い)、自分でコントロールできない状況で生じる(特に男性で多い)。 ・虚しさー 自分で選んでいない時、意味を感じない時に出てくる 感情は、クライエントの考え方に強い影響を与えます。逆に治療者側は、クライエントの感情を特定できることで共感して治療に有効に作用できるので、相手の感情を素早く察知して言い返せるようになるようにトレーニングを積む必要があります。練習でやってみましたが、反射的にそれを深く理解して返すには、相当のトレーニングが必要だなと実感しました。 午後の開始は、また2人一組で行う演習でスタートしました。お客さんの旅行プランを練るために、お客さんが何を望んでいて、何を感じているかを探る練習です。旅のお題として次の4つが順番に提示されました。 ・充実した旅 ・エキサイティングな旅 ・意味のある旅 ・ロマンチックな旅 このお題も、人によってどのように捉えているか、何を感じているのかはまちまちなので非常に難しかたです。セラピーの効果を高める要因として次の2つのことがあります。 1.目標設定 2.共感 クライエントは、自身で本当に何を望み、何を感じているかを自覚できていないので、セラピストは面接を通してその手助けをするわけです。腕のいいセラピストは、反射神経的にそれらを把握して短時間でセラピーを進めていけますが、そうでないセラピストは時間ばかりかかって成果を上げられないそうです。

鍵は感情

このセミナーでは、クライエントの感情を認識することが大事だと再三にわたって強調していました。そのためには、まずクライエントの発言から、考えと感情を分けることが必要になります。西洋の言語では、元々言語的手がかりから、考えと感情は明確に分かれます。講師の堀越氏は、10年以上米国で臨床のトレーンングを受け仕事をしてきたのでその辺のことはなおさら敏感に感じ取れるのでしょう。 考え:I think..... 感情:I feel... 行動:I did... 動詞からはっきりと分かれているのですが、日本語では考えと感情がごちゃごちゃで語られることが多いので、明確に分けるのが難しいそうです。 感情には以下の2つがありますが、語彙を聞き出してみると・・・ ・ポジティブな感情:楽しい、嬉しい、・・・ ・ネガティブな感情:怒り、悲しみ、不安、虚しさ、嫌悪・・・ ネガティブな感情の方が多い気がします。ポジティブな感情は、学問的には1つに集約されるそうです。ポジティブな感情は対人関係の中でしか生じない、誰かと分かち合うことで生じるといいます。嬉しいことがあるとすぐに人に伝えたくなりますね。 なぜ、ネガティブな感情がこれほど多く分化しているのか。それは感情がアラームの機能をもっているからだそうです。 ・怒り:押し返す力。自分の思い通りにならないとき。 ・悲しみ:何かをうしなったとき。 ・虚しさ:自分で選んでない。意味を感じないとき。 ・不安:未知のこと(特に女性)。自分でコントロールできないとき(特に男性で攻撃に発展することも)。 一方ネガティブな感情は、ポジティブな感情よりも残りやすい。孤立するとネガティブになりやすい。これらのことは、自閉症臨床をやっていると確かにそうだなと思うのですが、一般の心理臨床に当てはまると聞いて新鮮なに感じました。

昔から心理臨床の分野では、支持的 vs 指示的アプローチの論争がありました。支持的の利点は、クライエントとの関係性に安定を与えられることで、欠点はクライエントが依存的になることです。精神分析で古くから知られている「感情の転移」という現象がありクライエントはセラピストを好きになってしまうのだそうです。そしてセラピストの考えをクライエントが内在化・内面化して問題解決を図っていきます。多くの心理療法はこの立場で支持的の代表はロジャース派です。 一方、指示的の利点は、深く関わらず短期で問題解決することで、欠点はクライエントに拒まれることが多いことです。指示的の代表は行動療法です。私のABA的なアプローチは指示的の方です。私の立場では確かにそうだなと思います。 大人は基本的に自分で選んだことしか実行しません。そのためには自分で気づくという姿勢が大事になります。 認知行動療法では、療法が構造化されている、つまりマニュアル化されています。マニュアルということ型どおりで融通が利かないと思われますが、運転のメタファーでその誤解を解かれていました。 教習所で学ぶ運転の仕方はマニュアル化されていてその通りにしないと試験に合格できない。でもいったん免許を取って運転の仕方がわかるとどんな道でも運転できると。

CBTの治療プロセス

午後はまたまた演習から始まりました。今度は、効果的に質問をして相手の旅行プランを探るという演習でした。お題は、充実した旅、エキサイティングな旅、意味のある旅、ロマンチックな旅でした。まだ自分の中に指示的な要素が残っているなと実感した次第です。 セラピーの効果をもたらす要素で重要なものが2つあると言います。共感は何となくわかるのですが、最初に目標設定が明確であることは重要なのですね。 ①目標設定 ②共感 また支持的vs指示的の話です。「うつで死にたいんです」というクライエントに対して ・そうですね。死にたいんですね。 ・だめですよ。解決策を探りましょう。 このジレンマにどう対処するか?会場から意見が出されました。いろんな見方や取り組み方があるんだなと改めて思いました。 ・いったん感情を受け入れ、現実的解決策を探っていく(CBT的) ・質問し感情をモニターしながら自分から変わることを選んでもらう(ACT的) ・苦しいことを受け入れる(マンドフルネス的) あとうつの人には「頑張って」という言葉は厳禁と言われていますが、どの段階で言うかが重要で絶対に間違いではないそうです。でも不用意に言わないようにしないといけないので、いずれにしてもトレーニングが必要です。

CBTは型が決まっており、ある先生はマニュアルを丸暗記しないといけないと言われるほどです。その大まかな治療構造は次の通りです。 ①コール:本人からの治療の依頼。本人からhelpを出さないと良くはならない(お母さん・妻から言われたNG)。 ②査定(アセスメント):観察-質問-見立てを通してクライエントに何が起こっているかを知る。 ③ 共感・確認:相手を支えながら、問題の確認をする。 ④ガイド。方向づけ:相手の問題解決を図る提案 ⑤行動・認知変容 ⑥まとめ・再発予防 途中でうまくいかなくなったら、ひとつ前に戻ると良いそうです。 相手とぶつかった時どうするか? こちらが指示的になりすぎると相手と必ずぶつかります。ぶつかると、攻撃的になったり、来なくなったり拒否する、話題を変える、あるいはフリーズしてしまうので避けたいことです。ぶつかる関係の背後にあるのは、 ・こちらが押してしまうことから ・クライエントが変わりたくないから というのがあるそうです。 そしてこちらが押してしまった時には共通する相手の反応があります。 相手が「でも・・・」と言ったらアウトです。 ・ONの関係「そうなんです」 ・OFFの関係「でも・・・」 支持的、共感の3種の神器を使いましょう。 ・辛いですね ・大変ですね ・心配ですね ※「~ね」という言葉、ボキャブラリーを増やすことが大事で、決して疑問文で返さない。

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